COLUMN

N.009「クロモリ・ホリゾンタル」

#コラム


クロモリは、クロームモリブデン鋼。クロームとモリブデンを配合したスチールチューブを使ったフレームのこと。スチールチューブのことを少し説明すると、ダイヤモンド型フレームの前側の三角形に使われる3本のチューブには、バテッドチューブと呼ばれる高級スチールチューブが使われる。力がかかるチューブの両端の厚みと力のかからない真ん中の部分との厚みが違う。両端は力が価格場所で肉厚を厚く、真ん中は軽量化のために薄くなっている。厚みが二段階のチューブをダブルバテッド、三段階のものはトリプルバテッドと呼ばれる。ダブルバテッドよりトリプルバテッドのほうがより高級。
現代自転車用語ではホリゾンタルの反対語はベルティカルではなくて「スローピング」。この言葉が出来てからはやり始めたのが「クロモリ・ホリゾンタル」という言葉だ。フレームの前の三角形(「前三角」という)の上のチューブ(トップチューブという)が地面と平行かそうでないかということで、平行なのは「ホリゾンタル」と呼ぶのだそうだ。スローピング形態は実は昔からあって、ライダーの背丈が不足気味の場合は、ビルダーさんたちはスローピングにしていた事実がある。でもスローピングとは呼んでいなかった。クロモリもホリゾンタルも、当たり前のことだったからそう呼んで区別することもなかった。道具が何故区別されてしまったのか。
美学という学問がある。美学は「美とは何か」という美の本質、「どのようなものが美しいのか」という美の基準、「美は何のためにあるのか」という美の価値を問題として取り組んできた。科学的に言えば、感覚的かつ感情的価値を扱う学問でもあり、ときに美的判断そのものを指すこともある。より広義には、この分野の研究者たちによって、美学は「芸術、文化及び自然に関する批評的考察」であるとも位置づけられる。イタリアのとあるブランド自転車メーカーのサイトで見つけた十戒が面白い。
1. 完璧なバイクは、下り坂で設定された軌道をたどるバイクです。
2. レーシングバイクでは、フレームの0.5度が0.5キロよりも重要です。
3. 自転車では、フレームの500グラムよりも、ホイールの20グラムの方が重要です。
4. 自転車では、フレームチューブは料理の材料のようなものです。重要ですが、違いを生むのは料理人です。
5. 自転車は測定する必要があります。靴はS、M、L、XLではありません。
6. 自転車はイタリア文化の遺産であり、守る必要があります。
7. スチール製の自転車は金貨のようなものです。それは時間の経過とともにその価値を維持します。
8. 自転車にも心があります。それはフレームです。
9. 従来のフレームの構造には、地面に平行な水平管が含まれます。「スロープ」は規則ではなく例外です。
10. これは私の考えであり、絶対的であるとは主張していません。
自転車の「美」に関する感覚は洋の東西を問わないのだろうか。

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