N.015【ホビーサイクリストに必要なカーボンフレームとは】
わが国のカーボンフレームは、実は1970年代に本ウェブサイト「工房」のページに掲載されるサイクル&カヌーアマンダスポーツの千葉洋三氏の手によって具体化されている。氏の工房を訪れると、今でもおそらく当時と同じように、お弟子さんの安堵さんがプリプレグ(シート状のカーボンにエポキシを含浸させたもの)を一枚づつ張り付ける作業が行われている。カーボンチューブを金属性のラグなどでつぐような類のもではない。
アメリカのケストレル社は、1987年に世界で初となるフルモノコック型のカーボンフレームを発表している。それとほぼ同じ頃にパナソニックが(近日本ウェブサイトにて掲載予定)同様のカーボンフレームを採用したロードバイクを発売している。
今でこそ世界の大手自転車メーカーがこぞって製造・販売するカーボンフレーム(モノコック構造のモデル)だが、その原点の一つは日本にあるといっていい。これはカーボンという素材の開発・製造が東レや三菱レイヨン(現三菱ケミカル)といった日本の合成繊維・合成樹脂メーカーで行われてきたことに由来する。
最新のカーボンフレームは、大小さまざまな形にカットされたプリプレグが、製造工場の職工によって設計図にしたがって1枚一枚に丁寧に型に貼り付けてゆく。最新のカーボンフレームは、ある意味ハンドメイドフレームの製造よりも作業工程の多い手作業に作られている。
現在アマンダでは、90tのカーボンチューブでオーダーが可能とのことだが、千葉氏から「自転車のフレーム素材としてカーボンはスチールを越えられない」ということを何度もうかがった。一部のブログなどでカーボン礼賛する記事を見かけることもあるがが、日本で最も長くカーボンフレームに携わってきた千葉氏のおしゃることは(学術論文も発表されている)確かとも言えよう。
マスプロダクションの最新カーボンフレームは、いかに製造に手間がかかりツール・ド・フランスを制した世界屈指のトッププロが使っていようとも、しょせんはレディメイドである。ジオメトリーの自由が利かないフレームは、ライダー固有の最適なライディングポジションを得るには、ステムやシートポストとといったパーツ側への依存度が高くなる。さらにはエアロ化などによるハンドルセットのモジュール化をはじめ専用パーツや規格も多様なためパーツアッセンブルの自由度が限られ、修理対応が難しい。そしてカラーやグラフィックの選択肢も少ない。
UCIレースで勝つための〝究極の速さ〟を手にしたいのならそれは正義かもしれない。しかし趣味として自転車を楽しむサイクリストによっては、それはまた別の価値観であり、デメリットも少なくはない。ポジションを合わせやすく、パーツを自由に選べて整備が楽というのは重要な〝性能〟だ。とかくハンドメイドというと金属製フレームのイメージが強いが、アマンダをはじめ国内外にはオーダーメイドできるカーボンフレームある。千葉氏が語る「自転車のフレーム素材としてカーボンはスチールを越えられない」というのは、特に一般のサイクリストにとってあらゆる面から正しいのかもしれない。