COLUMN

N.002【スチールチューブは選べる】

#コラム

〝スチールフレーム〟というが、その素材は純粋な〝鉄〟ではなく、鉄に各種の添加材を混ぜ込んだ〝合金〟だ。金属工学の難しい話しは避けるが、フレームに使われているスチールチューブは、脱炭した鉄に微量なミネラル類(クロム、マンガン、モリブデン、バナジウム、ニッケルなど)を混ぜ込むことで合金化する。棒状に形成されたスチールを押し広げて作るのがスチールチューブでシームレス管と呼ばれる。シームレス管を作る技術がない昔は、板を丸めて溶接する〝電縫管〟というものだった。

微量に混ざったミネラル類のお陰で、硬さ、ひずみ、防錆性、融点、析出硬化の度合いなどが変化する。鉄は青銅に次いで人類が手にした金属だ。人類は歴史の中で鉄の操り方を学習してきた。刀身や鉄砲の砲身といったその時々の兵器という最先端の技術に使われてきたのがその証だ。スチールによる自転車フレーム作りは兵器づくりの延長線上にあった。日本の宮田工業やスペインのオルベア(ORBEA)なども火器製造をその源にしてきた。

現在、入手可能な自転車フレーム用のスチールチューブは、我が国ではカイセイ(元・石渡製作所)のみとなった。今では拠点が台湾に移ってしまったが、タンゲ(元・丹下製鋼所)は元祖日本のスチールチューブメーカーだ。海外ブランドではイギリスのレイノルズ、イタリアのコロンブス、デダチャイが知られている。また新しいところではアメリカのKVAステンレスなどがある。かつてはエクストラライト、オーリア、ビチュー、トゥルーテンパー、エクセルなどの自転車用スチールチューブもあった。

各社ともビルダーが求めるフレームの用途・仕様に応じて多才な種類のチューブを発売している。ひとくちにスチールチューブといっても、添加物の内容によって例えば〝クロモリ鋼〟〝ニッケルバナジウム鋼〟〝マンガンモリブデン鋼〟などいろいろな種類があり素性が異なる。さらにチューブの全長、断面形状、外径、肉厚、バテッド(チューブの肉厚が場所により異なること)、ベンド形状などに違いがある。

フレームビルダーは注文者の用途、脚力、ライディングポジションなどを勘案して、こうしたさまざまな違いのあるチューブのなかから最適な仕様を選び出し、組み合わせることでフレームに仕上げてゆく。また、チューブの素材特性、肉厚、溶接部分によってロウ付けに使用するロウ材(銀ろう、真ちゅうろう)を変えたり、溶接部の炎のあぶりかたを調節することで、適切なフレーム剛性や強度を確保している。

一般的のユーザーがフレームビルダーに使用するチューブをあれこれ指定するのは、専門的な知識を持たないので得策ではない。しかし自分が望む使用目的やライディングフィールを伝えると、ビルダーはいろいろと仕様を提案をしてくれるだろう。それを一緒に選んで自転車を作り上げてゆくのもオーダーフレームの大きな楽しみだ。ビルダーによってはフレームだけでなく、ステムやキャリアといったパーツやアクセサリのオーダーにも対応してくれる。

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