COLUMN

N.001【オーダー自転車とは何か】

#コラム

1990年前半くらいまでヨーロッパを中心とする自転車ロードレースの世界では、ほとんどスチールフレームを用いた自転車が使われていた。まれにチタン、カーボンやアルミのフレームという選択の歴史はあったものの、長らく主役はスチールチューブで構成されたフレームだった。一流選手は、シーズン初めの合宿までにビルダーから体のサイズを測って作られたオーダーメイドのフレームが供給されていた。だから、昔はみながオーダーメイドの自転車に憧れたのだ。

フランスのRENE HERSE(ルネルス)は、旅行用自転車「ランドヌール」でわが国では有名になったが、競技の世界でも知られた存在でもある。フランスの英雄ルイゾン・ボベ(1953~1955年ツール・ド・フランス3連覇を達成)がレースで使用し、またエルスの娘のリリーが使用して8回のフランスロードチャンピオンになっている。なおルネルスのブランドは、2000年初めにエルスにあおこがれ抜いた米国人がシアトルで復刻させている。

スチールチューブを用いてフレーム作りをするということは、サイズを乗り手の体格、乗り方や体力に合わせてオーダーメイドしやすいということだ。これに加えて、色やメッキ、オーナーの好みでブレイズドオン(直付け)と呼ばれるフレームへの特殊工作が可能なことが挙げられる。大手の自転車メーカーは生産の合理性を高めて売れ残りを最小限に納めるためにフレームサイズやカラーを絞っている。そのためどうしてもフィティングやルックスでジャストフィットを得にくい面がある。オーダーメイドは一品ものなので売れ残ることはない。オーダーメイドの自転車はフレームの設計やチューブの選択によって、ライディングフィールを乗り手好みにすることが可能だ。量産品のフレームと比べてカスタマイズのとても幅広く、無限の可能性が広がっているとも言えよう。

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